創業には、成功の可能性の対価として、自分や家族の人生に対して大きなリスクが伴います。軌道に乗るまでの不安定な生活やハードな労働時間、借金の返済など…勤め人だった時には創造もつかないような絶え間のないプレッシャーが待っています。
創業に対する家族の理解を得ることは当然のこと、創業してから「こんなはずじゃなかった」、「雇われていた方が楽だった」なんて後悔をしないためにも、客観的な自己分析をすることが大切です。「自分は本当に創業するべきなのか」、「心身の苦労に耐える覚悟はあるのか」、「創業者として足りない部分はないのか」などなど、あらゆる側面からも自問自答してください。
過大評価や過小評価にならないよう可能な限り客観的に採点することが大切です。本音で話し合える友人や家族がいれば、採点結果を見てもらい、他人からみた視点とのギャップを認識することも必要です。
どんなに斬新なアイデアであっても市場動向やニーズとマッチしていなくては経営を継続させることはできません。また、それぞれの業界によってビジネスモデルや慣習が異なります。そのため、既に業務経験があり精通している業種・業界で創業することが望ましいと言われます。やむを得ず経験の無い業界で創業する場合や業界をまたがった新ビジネスを始める場合は、業界動向や消費者ニーズ、特徴について入念に調査研究することが求められます。調査のためには、インターネットや書籍等で情報収集する方法と、業界に携わる人や消費者と実際に会い情報収集をする方法の両方を実施する必要があります。
記入例は自社の既存商品の強み弱みを分析する際の例ですが、他社の既存商品を分析することで、他社製品の弱みからビジネスチャンスを探り出すことにも活用できます。
さまざまな店や商売が乱立し、消費者の目が肥えてきている現代では、他社と同じ事業を行っていても成功することは困難です。いかに自身の強みを生かし、ビジネスチャンスを捉え、差別化を図った事業を考えられるかが成功のカギになります。単純に「飲食業をしたい」「美容室を開業したい」というだけでなく、どのような客層をターゲットに、どのように他社と異なった商品・サービスを提供していくかを検討することが、創業において最重要ポイントです。まずは、お役たちツールのSWOT分析シートで内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の整理を行い、その結果を基にクロスSWOT分析シートで事業アイデアを検討してみてください。
環境分析に力を発揮します。各項目をできるだけたくさん挙げることで、隠れたチャンスの発見につながります。明確になった強みはさらに磨きをかけ、弱みは克服できるよう努めましょう。外部環境(機会・脅威)における消費者ニーズをさぐる上では、普段から不便に感じていることや、こうなったら良いのにと思うことを基に検討することで、消費者の潜在ニーズをあぶりだすことができます。
SWOT分析したデータをクロスすることで、事業アイデアの検討材料になります。
「強み×機会」は、強みを生かして、チャンスを勝ち取るアイデア
「強み×脅威」は、強みを生かして、ピンチをチャンスに変えるアイデア
「弱み×機会」は、弱みを補って、チャンスを勝ち取るアイデア
「弱み×脅威」は、弱みから最悪のシナリオを回避するアイデア
という意味を持ちます。「強み×機会」で考え出した事業アイデアが最も優先するべきアイデアで、創業における中心的な事業アイデアになります。このアイデアを実行しながら他のアイデアで補強していくことで、他社との差別化が高まります
今後の経営の方向性となる事業コンセプトの検討は、創業計画の中でも最も重要な作業です。『事業アイデアの検討』を1歩前進させ、具体的にし、掘り下げ、誰に対してどんな商品やサービスを、どうやって、いくらで提供していくかを検討します。事業コンセプトが曖昧だと、顧客は何が売りたいのかよくわからない店(事業所)になってしまい、他社との差別化が図れなくなる可能性もでてきます。
各項目別に書き出すことで、曖昧だったり漠然としていたコンセプトが明確になります。自社の求める最上の顧客を具体的に定義し、その目線で「商品・サービス」、「価格」、「販売方法」、「販促活動」の4つの側面を検討することがポイント。
小売業・サービス業のような店舗営業の場合は、立地条件がその後の売上に大きな影響を与えます。家賃や間取りだけでなく、その地域の通行量や人口、年代層、近くに学校や企業、工場など大きな施設があるかどうか、その地域の人たちのライフスタイル等も調査する必要があります。取扱商品によって理想的な立地条件は異なるため、自社が想定する顧客ターゲットを見極めることが重要です。
どの程度の売上が見込めて、どれくらいの費用が掛かり、結果、どのくらいの利益が見込めるかを検討します。楽観的な計画や希望的観測ではなく、シビアなラインを見込んでおく必要があります。
売上予測は、業務経験や近隣同規模の同業他社の様子を参考にします。原価率や経費の想定は【外部リンク・小企業の経営指標/日本政策金融金庫】が業界平均値を掲載しているので参考にしましょう。ただ、単なる数字合わせにならないように、原価率やアルバイトやパートなどの人件費などが想定どおりで、できるかどうかをよく検討してください。
開業時の設備資金や運転資金、軌道に乗るまでの生活費などを踏まえ、どのくらいの資金が必要かを検討します。また、資金繰りが滞らないよう入金(売上金・借入金など)と出金(仕入れ・経費・設備投資・返済・生活費など)の予測を行う必要もあります。現金取引ではない場合の回収サイトや買掛金の支払いサイトを確認することも大切なことです。自己資金だけで開業費が賄えない場合、どの金融機関から融資を受けるかも検討しなくてはなりません。創業者向けの融資制度は日本政策金融公庫の創業者向け融資か、県や市の創業者向け制度融資かのいずれかが一般的です。
開業時の運転資金として、売上が全くなかったとしても3ケ月は持ちこたえられるだけの資金を確保しておく必要があります。また、創業計画書にはありませんが、6ケ月程度の生活費も確保しなくてはなりません。自己資金として必要資金の1/3以上は、用意しておくことが望ましいです。
ご注意と確認
ご紹介したお役立ちツールはあくまでもフォームですので、使い方によっては間違った答えを導き出す恐れもあります。ご利用の際は、小牧商工会議所または「専門家ナビ」の専門家にご相談ください。
この策定ガイドは、創業計画を策定するうえで一般的に最低限必要な流れをまとめた例です。場合によって、ステップの順番が前後したり、並行して進めたりする必要もあります。また、ここに記載した事項が創業に求められることの全てではありません。